コロナでCAが医療支援も!CAが受けている厳しい救急救命訓練の内容とは? (2/2ページ)
新型コロナウィルス感染拡大で医療態勢がひっ迫するイギリスやスウェーデンでは、客室乗務員に医療支援をしてもらう取り組みが始まるというニュースが報道されました。医療従事者でないCAがどうして医療支援を行うことが出来るのか?赤十字救急法救急員の資格も持つ元CAの筆者が、CAの救急救命訓練内容や実際に機内でお客様が倒れたときの体験について詳しくお伝えします。
目の前でお客様が倒れた!筆者の実体験
実際に私が遭遇した急病人発生の事例をご紹介します。
早朝フライトで、機内はほぼ満席。
朝早い便では、寝不足や低血圧などから体調を崩す方が特に多いので、お客様の様子に注意を払っていました。
すると、前方座席のお客様が突然立ち上がったため、目を向けるとその顔は真っ青でした。
「危ない!」と思い駆け寄るとその方はそのまま通路に倒れました。とっさにお客様の頭を包むようにしてかばい、頭部を打ちつけないようにしました。
ここからは訓練の内容を落ち着いてリマインドし、まずは意識の確認から始めました。
この場合、意識はあったので【意識、呼吸、血圧、脈拍、体温、顔色、瞳孔】などのバイタルサインを、機内搭載の血圧計や体温計でチェックしました。
着陸後救急車を呼ぶことを想定し、スムーズな引継ぎができるよう計測値をメモすることも重要です。
安全上通路に寝かせたままにはできないので、空いている座席にお客様を移動し、足を高くして寝かせ、状態を確認し続けました。
その間、他のCAは機内が騒然としないよう周りのお客様のケアを行ったり、機長に連絡するなど、CA同士でよく連携して事態の収拾に努めました。
幸い、お客様は回復されバイタルサインも問題なかったため、そのまま降りて行かれたのですが、降機にあたり車いすの使用や救急車の要請の有無も視野に入れ、確認を行いました。
さらに、この一部始終を時系列でメモを取り、今後の参考事例としてしっかり共有することも大切な業務の1つです。
業種を超えて連携することの重要性
いかがでしたか?
CAは単なる接客業以上の役割があり、非常時に備えた確かな知識をもってフライトに臨んでいます。
また、CAは航空機というとても閉鎖的で限られたリソースしかない空間でも最大限のことができるよう、仲間のCA同士で協力し合って状況を冷静に判断し、急病人などの非常事態に対処していることが分かっていただけたかと思います。
新型コロナウイルスの影響で、日本でもANAがCAの約8割にあたるおよそ6400名を一時帰休とする方針を発表するなど、現在乗務を外れているCAが多くいます。CAのこの鍛えられたスキルを、医療現場で活かせる機会があれば、筆者もぜひ協力したいと感じました。
世界的な危機を、業種を超えて各々が知恵やスキルを出し合って連携し、乗り越えていくことの重要性を、このニュースから強く感じました。
一日も早く収束し平穏な日々が訪れることを願ってやみません。