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チーフから学んだマニュアルの本当の意味~機上の空論 上空1万メートルからのエピソードvol.5 (2/3ページ)

菊地 麻衣子

CAが多くのフライトを重ねる中でたどり着いた接客への想いとは?「機上の空論 上空1万メートルからのエピソード」は、現役・元CAが「私にとって接客とは」というテーマでお送りする、リアルなエピソード満載の連載コラム。第5回は「チーフが教えてくださったマニュアルの本当の意味」というテーマで菊地 麻衣子がお送りいたします。

ご遺骨にシートを差し上げたチーフとの出会い


実際に国内線を乗務をするようになるとマニュアルの大切さ、そこからプラスアルファしてサービスすることの楽しさも分かってきました。

それでも、まだまだインチャージ(各クラスのまとめ役)になっても、マニュアルと臨機応変な対応の間で迷うシーンも多々あった2年目の頃でした。


ある満席近い便に、ご遺骨を風呂敷に包み大切そうに腕に抱えて機内に乗ってきたある女性のお客様がいらっしゃいました。

その方は私の担当エリアのシートへ座り、ご自身の腕の中に抱いたまま離陸を迎えようとされていたので、収納をお声掛けしなければいけないかなと迷っていた時のこと。

毛布を配りに回っていらっしゃったチーフがそのお客様に気付き、そっと2席続けて空席があるシートへそのお客様をご案内し、隣のシートにご遺骨を置いて差し上げたのです。


そのチーフの行動はマニュアルなどでは言い尽くせない、一人の人間としての優しさ以外の何物でもありませんでした。

確かに、隣のお座席が空いている場合、上の収納棚や前のお座席下に収納しきれなかったお荷物をシートベルトで括り付け、離着陸をすることはあります。


でもその日は上の収納棚や平置きできる収納棚も空きがあり、基本的にご購入頂いていないシートをお勧めすることなど全く思い浮かばなかった私。


大切なご遺骨と分かっていながら、お手荷物を収納して貰わないと保安業務に影響が出てしまうとそればかりに頭がいってしまった余裕のない自分が本当に恥ずかしく、同時にそんなチーフの元で働かせて頂けることを本当に光栄に思ったのでした。


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