「 一期一会で自分も磨かれる」 ~機上の空論 上空1万メートルからのエピソードvol.2 (2/2ページ)
CAが多くのフライトを重ねる中でたどり着いた接客への想いとは?「機上の空論 上空1万メートルからのエピソード」は、現役・元CAが「私にとって接客とは」というテーマでお送りする、リアルなエピソード満載の連載コラム。第二回は「一期一会で自分も磨かれる」というテーマでmemeがお送りいたします。
日本に出稼ぎに来ているお客様との出会い
多国籍のお客様で構成されたフライトでは、お客様一人ひとり違った文化、宗教、言語を持っています。そのため、機内では多くのお客様から勉強させて頂く機会に恵まれ、様々な価値観に触れることができました。
まさに舞台が変わると違う演じ方が求められるといった感覚!
とあるフライトで東アジア出身のお客様に出会いました。最初は英語で接客させて頂いていたのですが、私が日本人だと分かると、流暢な日本語でお話ししてくださいました。
そのお客様は日本の地方に出稼ぎに来ていて、私がベースとしてる国から乗り継いでさらに母国への帰路についている所でした。長時間のフライトであった為、ゆっくりとお話しすることができました。お客様の母国が抱えている問題や日本の経済についても伺うことができ、お客様の母国の事を勉強させて頂く機会に恵まれました。
お客様は大変な親日家。日本で働き、本国に帰って新しい家を建てるとのことでした。お客様にとって日本は第二の故郷のようなものだそうで、外資系航空会社の機内で日本人CAの私と日本語で話せたことでとてもほっとしたそうです。
私自身も日本を離れ、外地ベースでCAをしている身として、お客様の気持ちや境遇にとても共感できました。お客様が機内で日本語が話せてリラックスできたとのことだったので大変嬉しく思いましたし、私自身も外地で頑張ろうという気持ちを強く持ちました。
お客様は大統領!
また、とある便での出来事です。
一通りサービスを終えたところで、一人のお客様が私に挨拶にきて下さいました。フライト先でアフリカ諸国の大統領が集う国際会議があるとのことで、その方はなんと大統領だったのです。
とてもフランクな方でこれからの旅程や自国のことなどについてお話しして下さいました。当時、英語で接客すること、話すことに抵抗はなかったのですが、突然、大統領を目の前にして緊張してしまい、いつものように上手くお話しできなかったことが大変悔やまれました。
これがその後の英語の勉強のモチベーションにも繋がりました。
しかし、その大統領は日本の一般人と話す機会はほとんどなかったとのことで、私との出会いがとても印象深かったとおっしゃってくださいました。
一期一会、機内は自分を高めてくれる場!
この二つのエピソードから、私が感じたこと。それは機内は自分を高めてくれる場ということ。
CAは食事やサービスなどをお客様に与えるのが仕事というイメージがあると思います。しかし、私はCAというのはお客様から学ばせて頂くチャンスをもらえ、自分をますます高めていくチャンスがある職業だと感じます。
これを機に私は自身の会社が就航している都市について興味を持って新聞やニュースを見るようになりました。そして相手に関わらず、堂々と英語を喋れるように、接客以外でもお客様と会話をするチャンスを見つけるようにしてフライトするようになりました。
外資系航空会社で働き気づいた日本人としての誇りと世界共通言語の笑顔
笑顔で向き合えば笑顔がかえってくるという経験をみなさんはされたことがありますか?私は機内でも日常生活でも多々あります。
機内ではたとえ言語が通じなくても笑顔と心からのおもてなしをすればお客様に必ず伝わるという経験をたくさんしてきました。
日本人には「あうんの呼吸」というような、相手の気持ちを慮るという文化が昔から根付いていると思います。それはCAとして最強の武器であり日本人として誇りをもっていいんだということに、外資系航空会社で働くことで改めて気づかされたのです。
日本人としておもてなしの心は、日本人として日本で生まれた時から周囲の環境によって勝手に身についているものなのかもしれませんね。
そして笑顔は世界共通言語!人間関係をスムーズに構築する重要な要素だと思います。
私にとって接客とは?
国籍や言語が違っても、サービスはどんな方にも対してもできると思います。CAは相手をもてなしたいという気持ち、あたたかい心を運ぶことのできる貴重な仕事だと思います。さらに、私の場合、あたたかい心をお客様に運ぶことでお客様に成長させてもらうチャンスを何度も頂けました。
機内では、どんなお客様との出会いがあるか、事前には分かりません。毎回違うフライトで、一期一会の貴重な出会いに遭遇することもあると思います。これもCAという仕事の醍醐味ですね!
接客とはお客様をもてなすという側面だけではなく、その出会いによって自分を高めるチャンスに毎日恵まれているということもあると思います。それを意識することで仕事もさらに楽しくなり、お客様とのより良い関係づくりにも繋がるのではないでしょうか。