「想いを乗せるフライト」 ~機上の空論 上空1万メートルからのエピソードvol.1~
CAが多くのフライトを重ねる中でたどり着いた接客への想いとは?「機上の空論 上空1万メートルからのエピソード」は、現役・元CAが「私にとって接客とは」というテーマでお送りする、リアルなエピソード満載の連載コラム。 第一回目は航空機は、人や物を目的地まで運ぶ手段?!ではありますが、もっと奥深いものがあることに気付かされたエピソードをご紹介致します。
CAのリアルなエピソード満載!「私にとって接客とは?」
接客業の代表としてもよく挙げられるCA(客室乗務員・キャビンアテンダント)。
お客様に快適な機内での時間を過ごしていただきたいという想いで働いている点はみんな同じですが、実際にフライトで様々な体験を重ねる中で、その想いもそれぞれ個性を持っていきます。
「機上の空論~上空1万メートルからのエピソード」では、フライトでの印象的なエピソードや意識の移り変わり、そして接客に対する想いを連載形式でお伝えします。
定時性と安全性ばかりに気を取られていた、入社3か月目
フライトをしていると、お客様と出会い、その時々の人間模様を垣間見ることができます。
人と関わる仕事というのは、「ドラマチックな出会いと経験が得られる」、この言葉に尽きると思います。
今回は、そのような事に気付かされた機内でのエピソードをご紹介致します。
客室乗務員の役割は大きく2つあります。1つは、緊急時にお客様の安全を確保する「保安要員」としての役割、2つ目は、フライト中のお客様にサービスをする、「サービス要員」です。そして、定時性・安全性・快適性を求められるのも、航空会社の大きな役割です。
航空機は、安全性や定時性が前提にあってこそのサービスであることには変わりないのですが、どれもが大切なものです。
まだ、夏の暑さ残る初秋に入社し、新人訓練、OJTを終了し、乗務をスタートしたばかりの新人時代。
新人の私は、仕事を「こなす」ことだけで精一杯で、時間通りに仕事を終わらせ、何かあった時には保安要員の役割を果たす、といった定時性や安全性のことばかりで頭がいっぱいでした。
鏡の前でスカーフを結ぶ度に、「ああ、本当に客室乗務員になってしまったのだな、、」と自覚し始めた頃のエピソードです。
初めての「Xmasイヴ」フライトでの忘れられないエピソード
「私たちは白鳥のように優雅で落ち着いていなくてはダメ。水面下で必死でバタバタ動かしている足は決して周囲に見せてはだめよ。」
訓練所の教官にも、チェックアウト(実際の乗務開始)後の先輩方からも何度もいただいた言葉です。
しかし、入社3か月あまりの12月24日、Xmasイヴの国内線の夜のフライトは、年の瀬も近づく12月の繁忙期。
冬休みや帰省などもあって「満席」がほとんどであり、新人の私は、今日がクリスマスイヴであることさえも忘れてしまうほどで、「白鳥のような優雅さ」とは到底かけ離れた状態でした。
初めての繁忙期の乗務でした。
お客様一人一人のお顔や、状況などをしっかり観察する余裕などはなく、ましてや自分の化粧直しをする間などなく、制服のスカートのポケットに口紅を入れ、とにかく笑顔だけは忘れずに、先輩に必死についていくといった状態。
1時間あまりのフライトタイムで、お客様一人一人に飲み物をお出しして、片づけて、機内販売をして、着陸の準備。
緊張と慌ただしいフライトの思い出です。
そしてその「思い出のフライト」にも、ビジネスマン、ご家族連れ、ご旅行の方、等々、さまざまなお客様がいらっしゃいました。
そんな中にいらした、一人の女性のお客様。
座席を探しながら、私がお迎えしているドアサイド近くにいらした時、普通ではない状況に気が付きました。
「お客様が、泣いている。。」
その女性のお客様は、涙を流しながらご自身の席に座り、窓の外の空港の夜景を見つめながら、両手でハンカチを握りしめて、物思いにふけっていらっしゃいました。
「一体このお客様は、どうなさったのだろう。」
そんな気持ちがよぎりましたが、次から次へといらっしゃるお客様のご案内で、しばしその事は忘れていました。
お客様の状況を想像してみたら...
シートベルトサインが消え、機内サービスを開始しても、その女性のお客様は、窓の外を見つめてハンカチで涙をぬぐっています。
ドリンクをお伺いしても、首を振るだけのリアクション。 その後も到着して降機するまでずっと、涙を流していたお客様。
私は気の利いた事も出来ず、お客様に声もかけられずにそのフライトは終了してしまいました。
クリスマスイブの夜。
失恋してしまったのか。
恋人と遠距離恋愛で、しばしのお別れだったのか。
それとも嬉しいことがあり、嬉し泣きだった?
それともご家族に不幸でもあったのか。
宿泊先で、先ほどのフライトで泣いていたお客様が置かれている色々な状況を想像しました。
どんな気持ちで、どんな想いで、あの飛行機に乗っていらっしゃったのでしょう。
私はそのお客様のために何かできなかったでしょうか。