帝京大学医学部附属病院で高精度放射線治療機器によるがん治療をレポート
帝京大学医学部附属病院では、ペイシェント・セントリックという患者さん中心のコンセプトを掲げています。そのコンセプトのもとで患者さんの負担をなるべく軽減すべく開発されたがん治療の高精度放射線治療機器「Elekta Harmony」をはじめとした最先端のがん診療についてレポートします。
1,078 床を有し、地域がん診療連携拠点病院として長年がん治療に注力してきた帝京大学医学部附属病院
がんの実態として世界全人口80億人あたりのデータでは、5人に1人ががんになる可能性があると言われておりますが、1970年以降、5年生存率が49%から70%に上昇するなど、がんの生存率は年々改善傾向にあります。その一方で、他疾患と比較し、2倍の速さで増加しており、数十年後には世界で死因第1位となる可能性も示唆されています。また、日本におけるがん罹患数は毎年約100万人となり、全死亡に占める割合は27.6%となっています(出典 国立研究開発法人国立がん研究センター 「がん情報サービス」最新がん統計、令和元年(2019)人口動態統計 )。
地域がん診療連携拠点病院として、長年がん治療に注力をしてきた帝京大学医学部附属病院。昨今のがん治療は、患者さんにかかる負担が少ない治療が求められていますが、放射線治療も例外ではなく、快適かつ短時間に治療を進めることが大きな課題となっています。
大学病院として国内初の導入。最新の高精度放射線治療機器 「Elekta Harmony」とは?
今回、帝京大学医学部附属病院で採用された「Elekta Harmony」という最新鋭のがん治療の高精度放射線治療機器は、「ペイシェント・セントリック(患者さん中心)」がコンセプトの新しい放射線治療機器です。この機器は、放射線治療機器の販売・保守を行うエレクタ社が開発したもの。エレクタ社は、高精度放射線治療のパイオニアとして1972年に設立され、現在に至るまで持続可能で高度なテクノロジーを用い、費用対効果の高い放射線治療ソリューションを提供しています。
帝京大学医学部附属病院で行っているIMRT(強度変調放射線治療)という高度な放射線治療法は、既に50%以上の放射線治療を行う医療機関で導入されているそうで、それを発展させたVMAT(強度変調回転照射法)があり、さらに安全性の向上と患者さんへの負担軽減する様々な機能を加えたのが「Elekta Harmony」とのこと。この「Elekta Harmony」は、大学病院としては国内初の導入となるそうです。
帝京大学医学部附属病院放射線科の白石教授は、「これまでのピンポイント照射を行う機器と組み合わせることで治療を行っていく」と説明したほか、「高精度照射・治療が可能となるVMATを採用し、放射線治療装置のイメージを覆すやわらかで洗練されたデザインも大きな特徴となる機器です」と「Elekta Harmony」について話しをていました。
この「Elekta Harmony」は、顔認証による登録機能を使うことで患者さんを特定します。写真にもあるように圧迫感もなく洗練された優しいデザインになっているので、患者さんの不安を少しでも和らげてくれそうです。
以前の患者さんへの処方や実際に治療した際の注意点などのデータがリアルタイムでモニターや「Elekta Harmony」本体などに表示され、担当医師や診療放射線技師に的確に患者さんの情報がフィードバックされます。
画面下には患者さんの画像が表示され、実際に治療した際の画像やどのような固定器具を利用しているのかなどの情報もリアルタイムで確認することが出来ます。これにより、誤認による不適切な治療を防ぐことが出来るようになっており、医療スタッフにも患者さんにも安心感と負担軽減にもつながります。
また、「Elekta Harmony」とともに導入されている「Catalyst(カタリスト)」は、天井に設置された3台のカメラで患者さんの体表面をスキャンするので、体表面リアルタイム監視技術で患部の位置合わせなどプロジェクションマッピングなどを活用し、呼吸波形のリアルタイム監視など的確に治療を行えます。
リアルタイムで症状の変化を医師に伝えることができるモバイルアプリケーション「Kaiku(カイク)」も導入。
今回のイベントでは日本国内で帝京大学医学部附属病院が初の導入を行うことが決まっているモバイルアプリ「Kaiku(カイク)」についても説明してくれました。Kaikuとはフィンランド語で「やまびこ」を意味するそうで、患者さんが体調の変化について担当医師に伝え漏れを防ぐために開発されたツールです。
「Kaiku」はこれまで非常に手間が掛かっていた患者さんの症状等などを記入する問診票や現在の状態確認の手間を緩和してくれるアプリケーションです。
治療中、治療後の体調の変化などを患者さんがスマートフォンやタブレット端末で簡単に入力することが出来るだけでなく、数日、数週間、数ヶ月等幅広い期間に渡って、状態を入力していくことで、担当医師が過去の記録や傾向を素早く手軽にチェックすることが出来るようになっています。
例えば「発熱」という症状に対してどのような状況かとか、「術後の副作用があるか」、「痛みはどのあたりか」などより具体的な症状までわかりやすく担当医師に伝え、医師の確認もスピーディーにできるように設計されています。医師は患者さんの状態を踏まえたアドバイスなどをチャット機能で的確に伝えることができるほか、患者さん自身は、現在の状態を漏れなくレポートできるようになるというコミュニケーションがアプリ上で展開されていきます。
チャット機能では、患部の写真をスマホで撮影しその画像を送ることも可能になります。そのためこれまでの問診票などに手書きで記入していたものより早い時間で医師へフィードバックされることになるほか、医師も問診票を探す手間も省けることで的確かつ早い処置や処方が可能となります。
医療従事者側の画面には「自分がやらなければいけないタスク」が表示されるようになっており、患者さんからのメッセージ受信等がダイレクトに表示される設定となっているので、不慮の見落しやケアレスミスなどが軽減されるとのこと。このKaikuを帝京大学医学部附属病院では、院内の待ち時間などで利用することを検討しているそうです。
年々、がんの治療が進歩していく中で、いかに患者さんが快適かつ短時間に治療を進めることができるかが重要視されていく中で、放射線治療の新型機器である「Elekta Harmony」の導入と患者さんの状態をよりリアルタイムで把握できるようになる「Kaiku」の導入で、帝京大学医学部附属病院におけるがんの放射線治療はますます進化していくものと思われます。
帝京大学医学部附属病院HP:https://www.teikyo-hospital.jp/
エレクタHP:https://www.elekta.co.jp/