日本航空(JAL)海外基地乗務員の元祖教官が語る!日本人訓練生と海外基地訓練生の違い (2/2ページ)
日本航空が初めてヨーロッパ基地の客室乗務員を採用した際に訓練教官であった元日本航空男性客室乗務員の川井利夫さんに、日本人訓練生と海外基地訓練生との違いなど当時のエピソードを伺いました。
ヨーロッパ人CAの訓練で一番苦労した部分は
編集部:一番教えるのは難しかったのはどのような部分でしょうか。
川井さん:とにかく、社内には、ヨーロッパ人CAを訓練したという経験者もいません。そのKnow Howもない中での始めての訓練でしたので、すべてが手探り状態でしたね。
一番難しかった点はやはり英語ですかね。教えるとなると、機内で使う英語だけでは足りません。時差計算を教えるのに、
「日本は東経135°に位置している。グリニッジ標準時間に対して+9時間となる。時差は、15°違うと1時間違ってくる」
ということを説明しようとすると、“東経”って英語でなんと言うんだろうから始まるのです。前日に授業で使う用語に該当する英語を調べておきます。この英語調べが大変だったです。水平尾翼とか垂直尾翼とかの英語は、緊急事態に備えて、覚えているのですが、“胴体”って英語でなんというのだろうとなります。
日本人とは「Why」の使い方が違う!日本人訓練生とヨーロッパ人訓練生の価値観の違い
川井さん:また、日本人訓練生なら、言わなくても分かることを、すべて説明しておかないといけないので大変でしたね。会社の中でのやり式だとか日本人のやり式だとかもあります。ヨーロッパベースのCAたちは説明するとかならず“Why”と聞いてきます。また説明しなくてはなりません。
日本人がWhyというときは、なんでそんなことをするのかという、やや軽蔑の心があります。
しかし彼女たちがWhyというときは、純粋にその理由を知っておきたいからなのです。彼女たちは、質問があると、ボールペンを持った手をすっと上げてきます。
機内でのサービスの仕方を教えるのは、それほどむずかしくはありませんが、どうしてそうやらなければならないのかと、質問攻めに遭います。その“どうして”の部分を説明するが大変なのです。いろいろな決まりには、日本人特有の考えのもとで決まっていることが多くあります。日本人訓練生なら、説明しなくても、なんとなく理由が分かります。価値観が違うとその部分は説明してもらわないと分からないのです。
「なぜ日本人は、挨拶のとき、お辞儀をするのか」と聞かれて、皆さんはどう答えますか。
自分で判断する自立精神は日本人も見習ってほしい!
編集部:逆に日本人訓練生にも見習ってほしいなという部分はありましたか。
川井さん:彼女たちが“Why”を知ろうとするのは、自立精神があるというか、早く1人前のCAとして機内業務を遂行したいからなのです。いろいろな規程や規則もそうです。やり式もそうです。決まりごとの理由を知っていると、機内でよい判断ができるからです。
日本人CAも自分で判断できる部分を増やしたいと思い、その後の訓練部では、“Know How”を教えるだけでなく、“Know Why教育”も、重点施策となりました。
編集部:確かにその通りですね。お互いの良いところを学びあっていくことが大切ですよね。
川井さんはこの海外基地乗務員の教官経験を「もう一つのスチュワーデス物語」(上下)という本にまとめられているのですよね。
川井さん:はい、今回話し切れなかった食事や生活面など日常生活の中で感じる文化の違いやエピソードなどもたくさんご紹介しています。
編集部:私も読ませていただいたのですが、まるで歴史の教科書のように内容が深くて驚きました。海外の方と良い関係を築くために知っておいた方が良いこと、タブーなことなどもとても勉強になりました。
もっと深く知りたいという方はぜひ読んでみてください!
「もう一つのスチュワーデス物語(上下)」
・川井利夫 著
・定価 上下各940円(税別)
・TEM出版書店