難病患者さんと医療従事者のコミュニケーションと連携の意識調査実施。難病患者さんが求めるものは?
アストラゼネカグループの希少疾患部門アレクシオン・アストラゼネカ・レアディジーズの日本法人であるアレクシオンファーマでは、指定難病の患者さん500名および指定難病患者さんの看護をしたことがある看護師 464 名を対象に、「難病患者さんと医療従事者のコミュニケーションと連携に関する意識調査」を実施しました。浮き彫りになったその調査内容とは?
心の不安が大きい「指定難病」
不治の病というイメージの難病は、一般的に治りにくい病気や治療方法が確立されていない病気の意味で使われていますが、医学的に「ここからが難病で、ここまでは難病にあたらない」というような具体的なガイドラインがあるわけではありません。
現在、厚生労働省では、「発症の機構が明らかでない」、「治療方法が確立していない」、「希少な疾病である」、「長期の療養が必要である」という要件を満たす疾患を難病と定めています。さらに難病のうち、「患者数が日本において一定数(現在の基準18万人・人口の0.142%未満)に達しない」、「客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している」という要件を満たす疾患を指定難病と位置付けています。
特に指定難病を抱える患者さんにとっては、少しでも心の和らげるためには、医師や看護師さんなど医療従事者のコミュニケーションが重要となってきます。
そのような中で、アストラゼネカグループの希少疾患部門アレクシオン・アストラゼネカ・レアディジーズの日本法人であるアレクシオンファーマでは、指定難病の患者さん 500 名および指定難病患者さんの看護をしたことがある看護師 464 名を対象に「難病患者さんと医療従事者のコミュニケーションと連携に関する意識調査」を実施しました。
それでは、具体的に調査結果を紐解いていきましょう。
看護師が感じる困りごとや大変さは「専門的な知識やスキルの高さが求められる」が最多で過半数。また、3人に1人は「心理的なサポートとカウンセリングの難しさ」を挙げる。
難病患者さんの看護に携わったことがある、全国の20〜69歳の現職の看護師に対して、指定難病以外で通院・入院している患者さんと比べ、難病患者さんの看護においてどのような困りごとや大変さがあるかを尋ねたところ「専門的な知識やスキルの高さが求められる」(52.8%)がもっとも多く、次いで「心理的なサポートとカウンセリングが難しい」(34.7%)、「症状・状態を、看護師が理解することが難しい」(30.0%)が挙げられました。
さらに、病状ステージごとの看護の困りごとや大変さを尋ねたところ、最多項目に変化はなかったものの<(難病患者さんが)体に異変を感じてから病名が判明するまで>では、「症状をわかりやすく説明するのが難しい」(39.9%)、<(治療を開始後)症状が安定している状態>では、「次の病期ステージ の心構えなどを伝えるタイミングが難しい」(31.0%)が2位に上がりました。難病では専門的な知識が求められるため、症状の説明や時期などにおいて、看護師が患者さんとのコミュニケーションの難しさを感じていることがわかります。
難病患者さんの約6割が「医師とコミュニケーションがとれている」、同じく約4割が「看護師とコミュニケーションがとれている」と回答。
次に看護師に対して、難病患者さんにどのような情報提供や相談対応を行っているか尋ねたところ「症状の変化・状態」、「治療内容・治療の方向性」、「日常生活の過ごし方」、「精神面(心持ち)」、「保険・制度活用」、「医療費」についてが約5割、「就学・就労」、「結婚・出産・介護」、「患者団体」については約3割の看護師が対応していると回答しました。看護師が、難病患者さんに病状や治療に関することだけでなく、日常生活、就労や結婚・出産など、さまざまな相談対応を行っていることがわかります。 一方で、相談を受けているなかで対応が難しいものを尋ねたところ、「精神面(心持ち)について」、「医療費」、「保険・制度活用」、「就学・就労」など、病気そのものに関すること以外が上位を占めまし た結果となりました。難しいと感じながらも、看護師が難病患者さんとさまざまな事柄についてコミュニケーションをとっているという実態が伺えます。
「医師と難病患者さんとのコミュニケーションサポートができているか」に対して、看護師の7割以上が「できていない」、「おそらくできていない」または「どちらともいえない」
看護師に対して、難病患者さんの診療において「医師と患者のコミュニケーションサポートができているか」を尋ねたところ「できていない」(19.2%)、「どちらともいえない」(52.4%)という結果でした。看護師の7割以上が課題を感じていることがわかりました。さらに「医師と患者とのコミュニケーションサポートをするために、医療現場にどのような課題があるか」という問いには「十分な時間を割くことが難しい」(60.1%) が最多、次いで「看護師、医師、患者の三者で直接コミュニケーションできる場が少ない」(56.3%)が挙げられました。
難病患者さんの約6割が「医師とコミュニケーションがとれている」、約4割が「看護師とコミュニ ケーションがとれている」と回答
最後に、難病患者さんに、看護師に求めること、これまで看護師の看護で嬉しかった・助かったことについては、看護師に求めることは「精神面(心持ち)について支えてほしい」(17.6%)、「症状の変化・状態について相談にのってほしい」(15.2%)、「治療内容・治療の方向性について(薬の効果や、副作用など含む)説明して欲しい」(13.8%)などが挙げられました。また、これまで看護師の看護で嬉しかった・助かったことは、「親身に接してくれた」(24.0%)がもっとも多い結果でした。
難病患者さん、約4割が「医師と看護師の連携はできていない」と回答
難病患者さんに、ご自身の治療や看護において、医師と看護師の連携がとれているかを尋ねたところ、 約6割(61.8%)の方が「よく連携できている」および「連携できている」と答えた一方で、約4割(38.2%)が「あまり連携できていない」および「まったく連携できていない」と回答しました。これは、同質問を行った難病以外の病気で通院または入院した患者さんの回答「あまり連携できていない」および「まったく連携 できていない」(25.2%)と比べると、13ポイント高い結果でした。 このことから、難病患者さんと看護師どちらも医療従事者の連携に関して疑問や課題を感じていることが浮き彫りになりました。
一方、難病患者さんは看護師に対しては「精神面についての支え」を求めており、嬉しかったこととして「親身に接してくれた」という回答も多く見られるなど、常に不安な気持ちになっている難病患者さんにとって心の支えという寄り添いが何よりもありがたいことと感じているようです。
難病患者さんが、これまで看護師の看護で嬉しかった・助かったことに4人に1人が「親身に接してくれた」と回答
最後に、難病患者さんに、看護師に求めること、これまで看護師の看護で嬉しかった・助かったことを尋ねたところ、看護師に求めることは「精神面(心持ち)について支えてほしい」(17.6%)、「症状の変化・状態について相談にのってほしい」(15.2%)、「治療内容・治療の方向性について(薬の効果や、副作用など含む)説明して欲しい」(13.8%)などが挙げられました。また、これまで看護師の看護で嬉しか った・助かったことは、「親身に接してくれた」(24.0%)がもっとも多い結果でした。
まとめ~難病患者さんが望む“理想の看護師”は「ごく普通の人」〜
今回の調査で、難病患者さんだけでなく、指定難病に関わる看護師も難病患者さんの看護において、接し方の難しさやさまざまな悩みを抱えていることがわかりました。また、難病患者さんが望む“理想の看護師” のタイプを探るために一般に広く使われているアーキタイプ※に基づいて回答を求めたところ、およそ3人に1人が「ごく普通の人」と答え、もっとも多い結果となりました。その理由として「身の回りのことを専門分野の知識を持った人に相談できると安心感が得られる」、「普通の感覚の人の方が気持ちをわ かってもらえる」、「気兼ねなく話せる方が良い」などが挙げられました。難病患者さんが、看護師に対して、医師とはまた異なるより自分自身に近い存在として、精神的な支えやサポートを求めているとがわかりました。
多くの難病患者さんが最も求めているのは、心の支えという精神的支柱を求めています。少しでも周りの方も寄り添う気持ちで接していきたいですね。
※アーキタイプ:似たような性格の人々が共通して持つ思考や目標、欲求の一般的なパターン。人間心理学によると、12 種 類のアーキタイプがあると言われ「ごく普通の人」のほかには、「世話好き」「純粋な人」「愛にあふれた人」「ムードメーカー」 「賢者・賢人」などがある。