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年齢や障害の有無などの多様性を包含した社会をめざして行進するインクルーシブパレードが開催

CA Media編集部

「インクルーシブデザイン」ってご存じですか?障害当事者をはじめとするマイノリティの方に、企画の最初の段階から参加してもらって、対話しながら共に創っていく中で新たな価値を生み出す手法のことです。今回は、2023年11月11日(土)に、大阪のど真ん中でインクルーシブデザインによるイベントが開催。『インクルーシブパレード2023 OSAKA』の模様をレポートします。

視覚障害者ら約350人が集結、大阪天満宮から日本一長い天神橋筋商店街を語り合いながら練り歩くパレード「障害があってもなくても友達になろう!」



『インクルーシブパレード2023 OSAKA』は、「障害があってもなくても友達になろう」をコンセプトに、インクルーシブデザインを用いて企画した日本最大規模のイベントです。初開催の昨年は、車椅子使用者と企画して東京で開催されましたが、第2回目となる今年は、視覚障害者である白杖使用者や見えない、見えにくい方と共に企画し、大阪で開催されました。







パレードのルートは、大阪天満宮をスタート地点として、日本一長い天神橋筋商店街を抜け、扇町公園までの約1km。まずは、私も皆さんと一緒に40分かけてパレードに参加してみました。白杖使用者や車椅子使用者の皆さんと一緒に音楽に合わせて、どこまでも続くかのように見える商店街のお店を横目に見ながらお話しして歩く時間は、思った以上にとても楽しく、貴重で、時間が経つのを忘れてしまうほどでした。最初は緊張しましたが、旗を持っているからこそひとつになれる。そんな感覚でした。


京都から着物を着てパレードに参加した視覚障害者の田淵ふづきさんは、「大好きな着物を来て、大阪の街を皆でパレードできて嬉しい」と目を輝かせて話してくれました。着物が好きになったきっかけのエピソードも話してくれました。伴歩者の方が、「商店街にあるドーナツ屋さんに20人くらいの行列ができているよ」という話をしたら、今度は美味しいドーナツ屋さんの話になるなど女子トークで盛り上がりました。





また、多くの子供たちもパレードに参加していて、車椅子使用者の子も車椅子を押している子もみんな笑顔で楽しそうにパレードに参加していました。当日歩いてみて感じたのは、「障害があるとかないとかは本当に関係ないのだな」というシンプルな気付きでした。商店街の皆さんも私たちに笑顔で手を振ってくれるなど、旗や手を振りかえしながら練り歩く時間は、予想以上に心地よく、幸せなひと時を過ごしました。


インクルーシブなパレードの特徴は?


今回のパレードには、インクルーシブな様々な特徴があるのでいくつかご紹介させていただきます。


①「うしろを振り返るパレード」

パレードは、通常前を向いて歩きますが、白杖使用者と一緒のパレードは、白杖に気をつけながら歩かなくてはいけません。最低でも70cm開けなければ白杖が当たってしまうということで、前後の距離を保ってパレードになります。


②「見えたものを口に出して伝え合うパレード」

安全確保のため、お互いに状況を伝え合うパレードです。目の見えない人には、目の前に見えるものをただ伝えることが大切になります。子供のように素直に見えるものをしゃべることが親切になるという体験です。「これを伝えたらわかりやすいだろう」と配慮すると逆にわかりづらくなるので、見たことをそのまま話す方がわかりやすいようです。

③ 「対話しながらパレード」

見えない人も、弱視の人も、車椅子の人も、歩けるけれど障がいがある人も何に困っているのか、助けてほしいと言える、言ってみる、言わないとわからないのだということに気づいてもらうために対話をし合います。

④「見えない人を弱視の人がサポートするパレード」

見えない人が、車椅子の人をサポートするということも行います。これは見えない人からの提案なのだそうです。これこそ助け合いですよね。



障害者と健常者、本当のバリアを作っている一番の原因は、思い込み



パレードの後は、扇町公園で、開催されているイベントに参加しました。ステージでは、実行委員長で今回のイベント『インクルーシブパレード2023 OSAKA』の事務局を運営する一般社団法人インクルーシブデザイン協会代表理事の国宝孝佳さんとパラアスリートとして昨年日本記録も樹立し、今回のイベントでは視覚障害当事者として実行委員を務めた辻岡恵子さんによるトークショーが行われました。





「ダイバーシティインクルージョンという言葉が有名にはなってきていますが、障害を持っている当事者として、バリアに関してどう思いますか?」という司会者の問いに、辻岡さんは「バリアの一番の大きな問題は、みんなの思い込みや偏見、何が基準かわからない〝普通〟という言葉がまさにバリアになっている気がします。今回のようなパレードを通して、当事者と触れ合うことで実際の生の当事者が見えて来ると思います。私たちはただ目が見えないだけで、他はみなさんと同じ。感情も同じ、楽しいと思うことは楽しいし、嫌だと思うことは嫌。障害の部分が違うだけなのです」と言う。さらに「一般的には、見えなかったらこうなんじゃないかという思い込みがバリアを作ります。ぜひ当事者の方と言葉を交わしてほしい。例えば街中で声をかける時、今声をかけたら悪いのではないかという気持ちはいらないと思います。声をかけてもらえたら「今、大丈夫です」って言えたり、「この部分を助けてほしい」と言いやすいから。今日のパレードのように肩を並べて歩いたりお話をするのは、とても大事だなと思います」と共に接してみることへの大切さを語っていました。


一方、国宝さんは「車椅子の友達や障害当事者の友達からバリアフリーについての話を聞くと、日本は段差がないし、エレベーターもある。設備面や建物などハード面はすごく進んでいるのですが、誰も助けてくれない」と。「つまりソフト面が進んでいないということです。海外は段差もあるし、土の道路には溝とかもある。でも、みんなが助けてくれるから、ひょいって段差も溝も超えられるし、困ることがほとんどないらしいのです。海外と日本の良いところを良いところどりして取り入れていく方向性で進めるといいですね」とコメント。


お二人の話を聞いて、改めて目が見えない人も見えている人もお互いにハッピーになる法則は、まずは声をかけあって、コミュニケーションをとりあうことから始まるのだなということを実感しました。でも、それって、障害を持っていようが持ってなかろうが関係ないのですよね。それがインクルーシブの究極の形ということなのだろうなと感じました。



楽しく体を動かして、「見えない」を体験



パレードゴール地点の扇町公園内各所では、目隠し体験ゲーム、白杖体験、サッカーやラグビー、ボッチャ、ランニングなどのブラインドスポーツ体験などを見に行きました。






  

イベント会場には、子ども達がたくさんいました。目の見えない人との触れ合いが、インクルーシブ教育の実践に繋がるリアルな現場だということを感じました。互いに発信し合うパレードという位置付けにすることで、自然と会話が生まれて、見える人と見えない人の心のバリアが一枚薄くなるようなダイバーシティの実現の一歩に繋がっているのではないか、そんなことを感じました。



インクルーシブデザインの未来を感じて



次に見学させていただいたのは、今回のイベントの事務局を運営している一般社団法人インクルーシブデザイン協会のブースです。まずは、イベント当日からクラウドファンディングで販売をスタートするというインクルーシブデザインのカバンを拝見。片麻痺当事者として開発に携わったYUJI TAKACHIさんが直接紹介してくれました。


カバンの特徴は、両手を使わずに片手で開けることができること。オールマグネット構造で、全てのポケットに片手でアクセスできること。見なくても取り出せる、目で確認するストレスを軽減した構造の画期的なショルダーバックなのだそうです。もしかしたら、おっちょこちょいでいつもバタバタしている私にもぴったりのバックを見つけたかもしれないなと思いました。



片手一本で出し入れができるストレスフリーなショルダーバック


商品名: n=1 (エヌワン) 

購入先:クラウドファンディングサイトで受注受付中(2024年1月末まで) https://bit.ly/3spv9nO


最後に、実行委員長であり、一般社団法人インクルーシブデザイン協会代表理事の国宝孝佳さんに来年2024年の開催に向けての豊富などをお聞きしました。「今回の第二回は、視覚障害当事者の方に入っていただきました。来年はまだ計画段階ですけど、聴覚障害の方に入ってもらったら、どうなるのだろう?って考えています。多分音楽はなくなるだろうし、もっと大きなモニター車が出て、そこに何かしらリズムをとるような映像が流れて・・・。運営は大変ですけど、頑張りたいと思います」と、次回開催のテーマを語ってくれました。「本来ならば障害があってもなくても友達になろうなんてことは言いたくはないのです。でも、いつかそういう言葉が無くなるぐらい社会に浸透することができれば、今とは違う未来になっていくのではないかなと本気で思っています。ですので、皆さん来年も是非また遊びに来てくださいね!」。


私も今回イベントに参加して、新しく視野が広がったような感覚を感じました。これからは、街を歩いている時も障害者の人が今までより目に入ってくると思います。その時、まずは挨拶をして、声をかけることから始めたいなと思います。インクルーシブデザインで本当のバリアフリーになる新しい未来が感じられたイベントでした。


インクルーシブパレード2023 OSAKA公式サイト


https://inclusive-parade.jp/

公式Instagram
https://www.instagram.com/inclusiveparade/

一般社団法人インクルーシブデザイン協会

https://inclusive-design.jp/


事務局:一般社団法人インクルーシブデザイン協会(大阪市北区)

問い合わせ: 06-7777-1571


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